院留学の英語力① 「英語力が低くても院留学できる!」は間違い(4例を紹介)

 
 
一連の英語に関する記事は、大学院留学(主に英国)に関心がある人向けです。
 
 
 
0. 英語ができない状態での留学は勧めない
 
 留学目的、コースの種類にもよりますが、社会科学系・人文科学系の学業に限った場合には、基本的に英語力がなければ大学院留学は諦めたほうがいい、と思います。
 
  なぜなら、IELTS 6.5-7.5、さらにはTOEFL 105を保持していても、授業に付いていけない or 付いて行けても相当シンドイ思いをしているからです。
 
  大学院のコースワークにおいて、英文で大量の読み込みをし、そして英語で書き(それらの出来で成績が評価される)、授業中に発言する必要があります。そして、上記のスコアでさえ、その最低限の土台が築けているかどうか怪しいからです。
 
 
 1.4名のブログを紹介(IELTS6.0-7.5、TOEFL 105)
 
 ここで、自分の体験の前を綴る前に、他の大学院留学経験者4名 (イギリス留学3例、アメリカ留学1例) のブログを紹介します。これらの留学ブログを選んだのは、スコアが公表され、専念度合(=授業についていけるか)にも触れているからです。(以下、引用内の太字は、本ブログ執筆者によるもの。)
 
 
経験談1>
留学先と時期:イギリス留学2016-17
スコア:IELTS Overall ? L 5.5 R6.5 W5.5 S6.5( Pre sessional courseを経由)
私は日本ではスコアが上がらなかったので半ば強引に留学しましたが、できればIELTSは7.0あればより学業に専念できると思います。
 
 
 
経験談2>
留学先と時期:イギリス留学 2017-18 
スコア:IELTS Overall 6.5 (Reading 6.5 Writing 7.0 Listening 6.5 Speaking 6.0)
私はIELTSを6.5を持って、イギリスの大学院に入学したのですが、正直なところこの英語力では全然ついていかなかった

 

 

経験談3>

留学先と時期:イギリス留学 2014
留学前のスコア:IELTS Overall 7.5 (Reading 8.5 Listening 7.0 Writing 7.0 Speaking 6.5
1学期、2学期の授業を終えての感想は、、、、、Reading なんとかついていけるListening なんとか、頑張れば、、Writing なんとか、、頑張れば、、Speaking 言いたいことの10分の1しか伝えられない

 

経験談4>

留学先と時期:米国Harvard大学院留学2016-17
スコアTOEFL 105
ハーバードの院は最低
TOEFL100〜105オーバー
日本にいた時は
結構なハードルに見えるのですが
非常識な設定ではない
というのが結論です
(中略)
それぐらいないと
悲しいかな全然付いていけない
 
スコアがあっても付いていけない

 

 

 
以上のように、IELTS 6.5-7.5やTOEFL 105を保持していても、授業に付いていけない or 付いて行けても相当シンドイ思いをしています。私自身、IELTS7.5で英国大学院に留学しましたが、かなりしんどかったです( その辺りの詳細について、次回書きます)。
 
 
(ちなみに、各ブログの内容は英語以外にも参考になる点が色々あるかと思います。)
 
 
 
2.「英語力が低くても留学できる!」は大間違い
 
ネット上では「英語力がなくても大学院留学ができる!」などで主張しているブログや、斡旋団体の広告などがあります。たとえば、IELTS5. 0でも一流イギリス大学院に行けることを謳っているブログや、英語力に自信ができなくなくても留学できるという文句の広告を見かけたりします。
 
 
しかし、私は自分の体験と他の留学記情報をもとに、これらの主張には非常に懐疑的です。以下は、また別の英国院留学経験者(@LSE)のブログからの引用です。この主張に非常に強く賛同します。
英語ができない人に大学院を勧めるのはかなり疑問。だって、大学院留学べらぼうに高いんですよ。そこに英語ができない状態で行ってそれがその人のためになりますかね。

 

 まさに、その通りだな、と思います。

 

SOAS開発学(修士)の授業紹介

 

[ 1. SOAS開発学部]

 

 2018/2019年度のロンドン大学SOASの開発学部(Department of Development Studies)の授業を紹介します。


   SOAS開発学部の修士課程には、約250人の学生が在籍していて、以下のコースが11つに分かれています。

 

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 基本的に各コースによって必修の授業が異なりますが、別のコースでも、同じ授業を受講したり、必修の授業が被ることもあります。 詳細は以下を参照して下さい(https://www.soas.ac.uk/development/programmes/)。 

 

 ちなみに、授業は、年間20週間あります。 1学期目は10月の頭から12月半ばまでに計10週間あります。クリスマス休暇を挟み、第2学期が始まりますが、同じようなスケジュールで進みます。第3学期は、基本的に授業がなく修士論文に集中する期間です(イギリスによくある1年間の修士課程で、提出は9月頭)。

 

 よく言われるように日本の大学と違い、授業は1コマがかなり重いです。私は通年のコマを4つだけ履修しています。しかも、そのうちの1コマはすでに多少勉強しており馴染みのある内容ですが、それでも授業の予習やレポートで溺れかけていて(いや、溺れていて)息継ぎをするので精一杯です。

 

 

 それはともかく、ここでは、私が所属している MSc. Development Studiesの必修を2つ紹介します。

 

SOAS MSc. Development Studiesの必修2コマ

 

 MSc. Development Studiesでは、必修が2コマあります。

 

a) 開発の理論・政策・実践

(THEORY, POLICY AND PRACTICE OF DEVELOPMENT :TPPD) 

b)開発の政治経済学

( POLITICAL ECONOMY OF DEVELOPMENT :PED)

 

の2つです。片方は開発の理論を、もう片方は政治経済学を学びます。内容についてはまた別途紹介しますが、ここでは日本とは違う授業の形式・様子・リーディング課題・レポート課題などについて説明します。

 

 

 

 

 授業の形式としては、TPPDとPEDは、どちらも「講義(1h弱)」&「少人数ゼミ(1h弱)」という形をとります。また、どちらも160人ほどが履修しています。 

 

 

 

 講義の授業は、大教室で教授が前で話をするので、印象としては、日本の大学と変わらないです。ただ異なる点としては、

「教授が英語で喋っていること」

「生徒が講義の途中でも平気で質問を出すこと」

「生徒は事前に課題を読み込んでおかねばならないこと」(後述)

が挙げられます。

 

 

 一方の少人数ゼミ(Tutorial)は、講義のあとにあります。人によって時間は異なり、大体10人くらいのゼミです。

 

 意外だったのは、少人数ゼミには教授が登場しないことです。代わりに大学院生(PhD生)が先生役になっていました。私のゼミでは、それぞれ、ボリビア人&イギリス人の大学院生が担当しています。二人とも大変優秀で、ボリビア人の院生の方は、母語でもない英語で上手に、1時間弱、司会進行しています。

 

 

 ゼミのクラスメートには、欧米の人が多いです。たまたま振り分けのせいなのか、インド人、パキスタン人とかもいますが、東アジア、東南アジア圏の人は少ないですし、アフリカ出身の人は一人もいないです(アフリカ系米国人はいます)。

 

 

 ゼミの進行の仕方としては、TPPDもPEDも、担当しているPhD生によって異なるみたいです。私の場合は、TPPDの場合は、クラスを2つにわけ、交代で各グループが課題図書(論文)のレジュメを準備し、発表させ、そして、PhD生が司会役となって全員で議論をするという形をとっています。一方、PEDは、PhD生が前でしゃべる時間が比較的長く、時々生徒が発言するという形です。グループワークは課せられたことはありません。

 

 

 リーティング課題は、イギリスの大学院だけあって、非常に多いです。1つの授業だけでも、週に最低でも30~50ページ(論文2〜3本)読むことを求められています。そのため、他の授業と合わせると週200ページ近いときもあります。授業は生徒がそれを読んだことを前提にして、進んでいきます。

 

 

 レポート課題は、たくさん課せられます。締め切りは事前に発表されており、計画的にやるようになっています。計画的にやらないと失敗しますし、計画的にやっても時間が少ないこともあり、残念ながらシンドイです(あくまでも個人的な感想ですが、少なくとも大半の留学生にとってもそうだと思います)。

 

 レポート課題のスケジュールとしては、以下のようになります。

a) TPPD

week 5に1000 wordsの書評課題(リーディング課題から一つ選んで書評を書く)

week 13に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

week 15に1000 wordsの課題(リーディング課題から一つ選んで書評を書く)

 4/19に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

 

b)PED

week 9に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

week 20に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

 

*PEDは、これに加え、4月or 5月にテストあり。

**week1~10は第1学期(10~12月)、week11~20は第2学期(1~3月)。

 

 このくらいの課題が、リーティング課題と並行して課せられます。

 

 

 

感想など 

 個人的には、リーティング課題を全部読み込むことができていない状況です。英語の論文検索やgoogleを使って、書評や要約を探したり、またシンドイときは日本語の要約を探して、それを見ることにしています。それでも、悲しいことに手が回らないことが多々あります。

 

 リーティング課題は、おそらく、周りの人(ネイティブを含む)も読み込めていない人も多いだろうな、という感じがします(ゼミの発言の状況を見ていてもそういう印象です)。ゼミで元気に発言している人をみると、もともとその議論を抑えているのだろうな、という印象があります。実感としては、もともと全部読めるように設計されてはいない、と思います。

 

 こんな状況なので、リーティング課題に関しては、何をどれだけ読むのか(=何をどれだけ捨てるか)というのを先に決めて読む方法が戦略的には良いのかな、と思います。どの論文は要約だけでいいのか、一方でどれは本文までしっかり読み込むのか、とかを決めて読むのが良いやり方なのかな、とやっていく中で思いました。いまは、その捨て方を思慮しているところです。

 

 あとは、writing が苦手なので、かなり歯痒い思いをしています。意見があっても、表現のストックが足りないために素早く書けなかったり、圧倒的に語彙数が少ないために正確に書けなかったりします。それもあり、時間内に書き上げられない。こういうストレスフルな状況です。グループワークで一緒になった英米人が、スラスラと、それっぽいことを書いたりしているのを見ると、やるせない気持ちになります。

 

 

 以上が、必修の授業・課題などの様子や感想です。

 

 

 SOASの開発学への進学を考えている方などに、少しでも参考になれば幸いです(自分自身、イギリスの大学院留学に関する情報が少なく、渡航前によくわからなかったので)。

 

 

ブログはじめます

  ブログを書くことにしました。

 ブータンでの半年間(2015.3-9)やアフリカに行ったこと(2013.8-9)についてまだ書いていないし。 いろいろと考えていることもあるので。3月いっぱいまで休学するので、時間がある今月から書きはじめようかな、と思いました。 

 ブログを読んで何かの話のネタや、考えるきっかけになれば幸いです。もし読んで思ったこと(建設的な批判でも、些細な感想でも)があれば、会った時にでもフィードバックをいただけたらありがたいです。 

 最後にブータンの写真を少し。ちょうど1年前の今日にブータンへ旅立ちました。

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 *2015.6頃に調査で入ったブータン西部の農村の写真。

 

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*東ブータンの僧院での写真。山奥でした。

 

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ブータンの首都ティンプーで見つけたお気に入りの「doorimon人形(インド製)」の写真