SOAS開発学(修士)の授業紹介

 

[ 1. SOAS開発学部]

 

 2018/2019年度のロンドン大学SOASの開発学部(Department of Development Studies)の授業を紹介します。


   SOAS開発学部の修士課程には、約250人の学生が在籍していて、以下のコースが11つに分かれています。

 

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 基本的に各コースによって必修の授業が異なりますが、別のコースでも、同じ授業を受講したり、必修の授業が被ることもあります。 詳細は以下を参照して下さい(https://www.soas.ac.uk/development/programmes/)。 

 

 ちなみに、授業は、年間20週間あります。 1学期目は10月の頭から12月半ばまでに計10週間あります。クリスマス休暇を挟み、第2学期が始まりますが、同じようなスケジュールで進みます。第3学期は、基本的に授業がなく修士論文に集中する期間です(イギリスによくある1年間の修士課程で、提出は9月頭)。

 

 よく言われるように日本の大学と違い、授業は1コマがかなり重いです。私は通年のコマを4つだけ履修しています。しかも、そのうちの1コマはすでに多少勉強しており馴染みのある内容ですが、それでも授業の予習やレポートで溺れかけていて(いや、溺れていて)息継ぎをするので精一杯です。

 

 

 それはともかく、ここでは、私が所属している MSc. Development Studiesの必修を2つ紹介します。

 

SOAS MSc. Development Studiesの必修2コマ

 

 MSc. Development Studiesでは、必修が2コマあります。

 

a) 開発の理論・政策・実践

(THEORY, POLICY AND PRACTICE OF DEVELOPMENT :TPPD) 

b)開発の政治経済学

( POLITICAL ECONOMY OF DEVELOPMENT :PED)

 

の2つです。片方は開発の理論を、もう片方は政治経済学を学びます。内容についてはまた別途紹介しますが、ここでは日本とは違う授業の形式・様子・リーディング課題・レポート課題などについて説明します。

 

 

 

 

 授業の形式としては、TPPDとPEDは、どちらも「講義(1h弱)」&「少人数ゼミ(1h弱)」という形をとります。また、どちらも160人ほどが履修しています。 

 

 

 

 講義の授業は、大教室で教授が前で話をするので、印象としては、日本の大学と変わらないです。ただ異なる点としては、

「教授が英語で喋っていること」

「生徒が講義の途中でも平気で質問を出すこと」

「生徒は事前に課題を読み込んでおかねばならないこと」(後述)

が挙げられます。

 

 

 一方の少人数ゼミ(Tutorial)は、講義のあとにあります。人によって時間は異なり、大体10人くらいのゼミです。

 

 意外だったのは、少人数ゼミには教授が登場しないことです。代わりに大学院生(PhD生)が先生役になっていました。私のゼミでは、それぞれ、ボリビア人&イギリス人の大学院生が担当しています。二人とも大変優秀で、ボリビア人の院生の方は、母語でもない英語で上手に、1時間弱、司会進行しています。

 

 

 ゼミのクラスメートには、欧米の人が多いです。たまたま振り分けのせいなのか、インド人、パキスタン人とかもいますが、東アジア、東南アジア圏の人は少ないですし、アフリカ出身の人は一人もいないです(アフリカ系米国人はいます)。

 

 

 ゼミの進行の仕方としては、TPPDもPEDも、担当しているPhD生によって異なるみたいです。私の場合は、TPPDの場合は、クラスを2つにわけ、交代で各グループが課題図書(論文)のレジュメを準備し、発表させ、そして、PhD生が司会役となって全員で議論をするという形をとっています。一方、PEDは、PhD生が前でしゃべる時間が比較的長く、時々生徒が発言するという形です。グループワークは課せられたことはありません。

 

 

 リーティング課題は、イギリスの大学院だけあって、非常に多いです。1つの授業だけでも、週に最低でも30~50ページ(論文2〜3本)読むことを求められています。そのため、他の授業と合わせると週200ページ近いときもあります。授業は生徒がそれを読んだことを前提にして、進んでいきます。

 

 

 レポート課題は、たくさん課せられます。締め切りは事前に発表されており、計画的にやるようになっています。計画的にやらないと失敗しますし、計画的にやっても時間が少ないこともあり、残念ながらシンドイです(あくまでも個人的な感想ですが、少なくとも大半の留学生にとってもそうだと思います)。

 

 レポート課題のスケジュールとしては、以下のようになります。

a) TPPD

week 5に1000 wordsの書評課題(リーディング課題から一つ選んで書評を書く)

week 13に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

week 15に1000 wordsの課題(リーディング課題から一つ選んで書評を書く)

 4/19に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

 

b)PED

week 9に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

week 20に2000 wordsの課題(レポート課題を一つ選び、essayを書く)

 

*PEDは、これに加え、4月or 5月にテストあり。

**week1~10は第1学期(10~12月)、week11~20は第2学期(1~3月)。

 

 このくらいの課題が、リーティング課題と並行して課せられます。

 

 

 

感想など 

 個人的には、リーティング課題を全部読み込むことができていない状況です。英語の論文検索やgoogleを使って、書評や要約を探したり、またシンドイときは日本語の要約を探して、それを見ることにしています。それでも、悲しいことに手が回らないことが多々あります。

 

 リーティング課題は、おそらく、周りの人(ネイティブを含む)も読み込めていない人も多いだろうな、という感じがします(ゼミの発言の状況を見ていてもそういう印象です)。ゼミで元気に発言している人をみると、もともとその議論を抑えているのだろうな、という印象があります。実感としては、もともと全部読めるように設計されてはいない、と思います。

 

 こんな状況なので、リーティング課題に関しては、何をどれだけ読むのか(=何をどれだけ捨てるか)というのを先に決めて読む方法が戦略的には良いのかな、と思います。どの論文は要約だけでいいのか、一方でどれは本文までしっかり読み込むのか、とかを決めて読むのが良いやり方なのかな、とやっていく中で思いました。いまは、その捨て方を思慮しているところです。

 

 あとは、writing が苦手なので、かなり歯痒い思いをしています。意見があっても、表現のストックが足りないために素早く書けなかったり、圧倒的に語彙数が少ないために正確に書けなかったりします。それもあり、時間内に書き上げられない。こういうストレスフルな状況です。グループワークで一緒になった英米人が、スラスラと、それっぽいことを書いたりしているのを見ると、やるせない気持ちになります。

 

 

 以上が、必修の授業・課題などの様子や感想です。

 

 

 SOASの開発学への進学を考えている方などに、少しでも参考になれば幸いです(自分自身、イギリスの大学院留学に関する情報が少なく、渡航前によくわからなかったので)。